DAD_PyVUMAAddt4
【プロローグ】 あのラストフェスから、およそ9ヶ月が過ぎた。 夕闇に染まるハイカラシティ。 鮮やかな二色のネオンサイン。 バトルに興ずるイカ達を鼓舞するかのように踊り続ける、シオカラーズのふたり。 今でも鮮明に脳裏に浮かぶ記憶でありながら、遠い昔のことにも感じられる。

C-OElbQUQAAj2El
ラストフェスが終わったあの夜。 「アオリ vs ホタル」の結果は、ホタルの勝利で幕を閉じた。 だが、ふたりの間にわだかまりはなかった。 いつものように、ふたり揃って笑顔でスタジオを後にした。 これからもずっと、何も変わらないと信じて疑わなかった。 そう、あの時は……。

【第一話】 アオリとホタル、従妹同士のふたりによる、ダンス&ボーカルユニット、シオカラーズ。 ラストフェスをきっかけに、その人気に一層の拍車がかかった。 ハイカラシティのアイドルから、一躍トップスターとなったふたり。 それまでの活動の枠を超えて、多忙な日々を過ごしていた。
ふたりはルームシェアをしている。 ハイカラシティに来た直後は、都会暮らしの心細さや、経済的な理由もあって、一緒に暮らし始めた。 それに、物心がついた頃から、ふたりはずっと一緒にいる。 今は都会にも慣れ、収入も安定してきたが、離れて暮らすことは考えもしなかった。

C-dlyVeUAAAdMFM
プライベートでも仕事でも、ふたりはずっと一緒だった。 しかし、ソロ曲を発表した頃から、次第に単独での仕事が多くなってきた。 アオリは持ち前のキャラクターから、トーク番組やバラエティ番組への出演が増えた。 収録は深夜に及ぶこともあり、ロケで一日部屋に戻らないことも多くなった。
ホタルは「スミソアエの夜」で歌唱力が評価され、歌番組や舞台への出演が多くなった。 今までは部屋を出るのも一緒、帰ってくるのも一緒だった。 だが、今は戻る時間もまちまち、オフの日も合わないことが多くなってきた。 ふたりが一緒にいる時間は、以前より格段に短くなっていた。

C-dmI0xVYAESCK1

【第二話】 その日、ホタルはひとりで部屋にいた。 今日は仕事はないが、来月からは舞台の稽古が始まり、毎日が忙しくなる。 こうやって、のんびりできるのも今のうちだろう。 アオリは仕事で夜まで戻らない。 たまった家事を片付けながら、アオリの帰りを待っていた。
こんな時は、ふと考えてしまう。 ラストフェスの決着がついたあの時、アオリはどう思っただろうか? 悔しがってはいたが、それは単に勝負に負けたからだろう。 負けず嫌いのアオリらしい。 でも、ちょっとは自分に嫉妬したんじゃないだろうか? 負けたことを、今でも気にしているだろうか?
いや、考えすぎだ。 アオリに限ってそんなことはない。 むしろ、知らず知らずのうちに優越感を感じているのは、自分のほうかもしれない。 勝負に勝って、いい気になっているのかもしれない。 ホタルは、ちょっとだけ自分が嫌になった。
C-yINRcXcAI_1O1
その日、アオリは携帯電話のコールで目が覚めた。 マネージャーからだ。 予定していた収録が、他の出演者の都合で延期になったらしい。 今日は一日オフだそうだ。 ちょっと拍子抜けしたが、ひさしぶりに休みをもらったのだ。 ラッキーだと思えばいい。

C_BlbKaUAAAuh6L

部屋を見渡すと、ホタルの姿がなかった。 確か、今日はホタルもオフのはずだ。 時計を見ると、朝の8時過ぎ。 買い物に出掛けるには、まだ早い。 身支度をして、ホタルを探しに街へ出てみることにした。
そういえば、近頃のホタルは元気がない。 疲れているのだろうか? 嫌なことでもあったのだろうか? でも、ホタルの心配ばかりしてもいられない。 ここのところ、アオリも仕事で息をつく間がなく、ちょっと気が滅入っている。 今日は気晴らしに、ホタルを誘って出掛けよう。

C_BmAhVUwAApJcu
ホタルはカフェにいた。 ロブと一緒だった。 テーブル席に向かい合わせに座り、談笑している。 ロブとふたりは、出身地が近いせいか話が合う。 深く帽子をかぶっていて表情は見えないが、楽し気なホタルを見るのは久しぶりな気がした。 水を差すのはよそう。 アオリはそのまま部屋に戻った。
朝食の支度をしていると、ホタルが戻ってきた。 アオリが起きていることに驚いていたが、おはよう、と声をかけると、おはよう、と気の抜けた調子で返ってきた。 いつものホタルだ。 ふたりで朝食をとりながら、ホタルをショッピングに誘った。 ホタルは、ふたつ返事で誘いに乗った。

【第四話】 プライベートでアロワナモールへ来るのは、いつ以来だろう。 以前通った店や、新しく入った店を巡って、ウィンドウショッピングを楽しんだ。 ひとしきり目当ての店を回ったところで、カフェで休憩することにした。 アオリはアイスレモンティーを、ホタルはミルクティーを注文した。

C_Wp9V5VoAArZRq

こんな時は、自然と互いの仕事の話になる。 ロケ先での出来事、共演者の噂話。 話題はとめどなく、いくら話しても話し足りない。 アオリは、朝のカフェでのことを切り出してみた。 見てたんだ、と、ホタルは意外そうな顔をしたが、ためらう様子もなく、ロブとの会話について話し始めた。
ロブは最近、エビスシューズを辞めたらしい。 ずっと雇われ店長だったが、いつか独立して、自分の店を持つのが夢だったそうだ。 友人の紹介で、次の仕事の目処はついているらしい。 ロブくん大丈夫かな、けっこう軽いとこあるから、と、ホタルは、ちょっと心配そうにしていた。

C_WqXwbUMAAGy9j
ロブからの伝聞によると、アネモも新しい仕事を探しているらしい。 もともと接客が苦手なので、客と顔を合わさずに済む仕事を考えているそうだ。 最近はカンブリア―ムズでのブキのデコレーションの手伝いが忙しくなってきたので、それを続けつつ、片手間でできる仕事が理想らしい。
もしかしてアネモがブキチと……!? と色めき立つアオリだが、それはナイっしょ、とホタルは全否定。 ちなみにブキチは、カンブリアームズ二号店の出店を計画中だそうだ。 最近、新たなナワバリバトルの中心地として、若者が集まる街が生まれているらしい。 商売上手は相変わらずなようだ。
そういえば、ここしばらく、アタリメ司令にも会っていない。 忙しくて、こちらからも会いに行けないが、マンホールから顔を覗かせる姿も見かけていない。 タコもおとなしくなったし、おじいちゃんのことだから心配はいらないけどね、と、ふたりは顔を見合わせて笑った。
ずいぶん話し込んでしまった。 もう陽が傾き始めている。 そろそろ帰ろっか、そう言い合って帰路についた。 やっぱり、ふたりで一緒にいるのは楽しい。 いや、楽しいという言葉では表せない、特別な感情で心が満たされる。 最近たまっていた心のモヤも、すっかり晴れた気がした。

C_WrEeiUMAEOp2X

【第五話】 その日、ホタルは旅行カバンに荷物を詰め込んでいた。 シオカラ地方に里帰りするためだ。 急ではあったが、三日間の休みをもらった。 この休みが明けたら、舞台の稽古が始まって、休む暇もなくなる。 その前に骨休めをして来いという、事務所の心遣いだろう。
アオリも一緒にと考えたが、初日だけ仕事があるらしい。 短い休みを無駄にしないよう、一足先に帰省することにした。 あとから追いかけるから、アオリはそう言ってホタルを見送った。 シオカラ地方までは列車で三時間半。 そう遠くはないが、いつも隣にいたアオリがいないのは心細かった。
C_lofl6VwAEHNqr

久々に顔を見せた娘を、両親は暖かく迎えてくれた。 ここは何もない土地だが、穏やかな時間の流れが心地よい。 縁側で陽に当たりながら、日がな一日、都会での暮らしについて話して聞かせる。 両親は、アオリのことも気にかけていた。 もちろん元気、と答えようとして、少し言い淀んでしまう。

C_loz4DVwAAJQjI
ふたりとも自分のことで精一杯だ。 胸を張って答えられるほど、相手に目を向けることができていないと気づかされる。 でも、明日になればアオリもやってくる。 アオリの顔を見れば、こんな小さな罪悪感は消し飛んでしまうだろう。 そう思いながら、ホタルは床に就き、翌朝を待った。

C_lpF1_V0AAQ7zQ

【第六話】 次の日、ホタルは駅でアオリの到着を待っていた。 しかし、予定の列車にアオリは乗っていなかった。 また寝坊したのかな、そう思って、次の列車を待った。 だが、次の列車にもアオリの姿はなかった。 その次も、またその次も。 ついに夜になっても、アオリは姿を見せなかった。
事務所に電話をかけてみたが、昨晩は仕事が終わってすぐに帰ったそうだ。 慌てていた様子だったので、そのままシオカラ地方に向かうものだと思っていた、とマネージャーは答えた。 部屋にも電話をかけてみたが、応答がない。 ホタルは胸騒ぎを覚えた。

C_6Od0jUQAEecwB
翌朝、ホタルは予定を早めて、始発でハイカラシティに戻ることにした。 両親には申し訳なかったが、アオリのことが気がかりで、居ても立ってもいられなかった。。 車中も気が気ではなく、スマートフォンでアオリのことを調べる。 しかし、これといった情報は見当たらなかった。
ハイカラシティに到着すると、ホタルはまず部屋に向かった。 部屋はホタルが出発した時の、整頓されたままだった。 つまり、アオリが帰ってきた様子がない。 ここへも立ち寄らず、いったいどこへ……? しばらく考えたあと、思い立つと、ホタルはある場所へ向かって部屋を飛び出した。

C_6O2xsUIAAuySg

【最終話】

ホタルはタコツボバレーにいた。 アタリメ司令の小屋は、もぬけの殻だった。 室内は荒らされた様子はなかったが、隣にあったウォータードームは砕け散っている。 アオリの姿はなく、手がかりになるものも見つからなかった。 ホタルはもう一度、ハイカラシティに戻ることにした。
ハイカラシティは、ざわついていた。 オオデンチナマズが姿を消したらしい。 前にいなくなった時も、いつの間にか戻ってきた。 今度もまたすぐに戻ってくるだろう。 皆はそうタカをくくっているようだった。 ホタルは、ひとり戦慄した。 これは……もしかして、またヤツの仕業?
ホタルの目は、戦いを決意していた。 だが、ヤツが相手となると一筋縄ではいかない。 今はアタリメ司令もいない。 それに何より、アオリのことが心配だ。 じきに、アオリがいなくなったことに皆が気づき始めるはず。 自分までいなくなっては、騒ぎが大きくなる。 いったい、どうすれば……。

DAD_PyVUMAAddt4
そうだ、協力者を探そう。 かつてアタリメ司令がそうしたように、腕の立つ若者を見つけて、地下基地の探索を手伝ってもらおう。 しかし、このハイカラシティでは、ホタルの姿は目立ちすぎる。 オクタリアンの存在を知る者は、最小限に留めなくてはならない。 New!カラストンビ部隊の鉄則だ。
その時、ふと、アロワナモールでのアオリとの会話を思い出した。 最近、新たなナワバリバトルの中心地として、若者が集まる街が生まれているらしい。 そこなら、きっと腕の立つ若者も見つかるだろう。 行こう、新たな街、ハイカラスクエアへ……!
(スプラトゥーン2 ヒーローモードへつづく)

DAD_w6IUMAA2te_